コレクター紹介

スコット・プラット

ポケモンカード収集の第一人者~その人物像とは

ケビン・グルー著

SMRマガジン2017年7月号掲載記事(発行元:PSA)


子供の頃の彼は、まさにポケモンカード収集の神童と呼ぶに相応しい存在でした。

現在最も価値のある希少なポケモンカードのいくつかを、スコット・プラット氏は10代の後半になるまでに既に入手するという先見の明を持っていたのです。

現在29歳のプラット氏は当時を振り返り、「2000年半ば頃はまだポケモンカードの種類もそれほど多くなかったので、実はポケモン以外に何か集めるものがないか探していました」と語っています。

「ポケモンカードのレギュラーカードはほとんど持っていましたが、その後、いつの間にか一番レアなカードをインターネットで探すのに夢中になっていました。トーナメントの入賞者にだけ配られたという、とても希少なトロフィーカードを初めて偶然目にした時の衝撃をよく覚えています」カードを初めて見た瞬間、「こんなカードがあったなんて・・・まるでプラトンの洞窟の比喩に書かれていた、閉じ込められていた囚人が初めて洞窟の外に出て太陽の光に照らされた時みたいだ」と感じた程です。

2011年、プラット氏はその持ち前のねばり強さで、ついにポケモンカード界の「ホーナス・ワグナー」(非常に貴重な野球カードのひとつ)と称される「1998年ピカチュウ・イラストレーターカード」(状態良・未鑑定)を手に入れました。このレアカードは、1998年1月に月刊コロコロコミックが催したイラストコンテストの受賞者のみに贈呈されたカードです。プラット氏によると、その推定配布枚数はわずか20枚から 39枚、現在市場に出回っている枚数はそれをはるかに下回ると推測されます。知識豊富なコレクターでもある彼は、そのカードをPSA(Professional Sports Authenticator、第三者トレーディングカード真贋鑑定・グレーディングサービス会社)に鑑定依頼し、この種類のカードにPSA MINT 9グレードが付与された初めての事例となりました。

2013年9月、プラット氏はもう一枚所有していたPSA MINT 9グレードの「1998年ピカチュウ・イラストレーターカード」を即決価格10万ドルまたは最高提示額という条件でeBayに出品し、国際ニュースの見出しを飾りました。このオークションの入札件数は430件にものぼり、最終的には5万ドルで落札されています。さらに付け加えると、カードの所有時期は異なるものの、彼はPSA MINT 9グレード が付いたこのカード4枚全てを一時期所有しており、それらを一枚あたり最高約6万ドルという高額で売却しています。

「最後の一枚は、2016年11月に開催されたヘリテージ・オークションで、5万5千ドルの値を付けました」(プラット氏談)

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このような価格高騰は、ポケモンカードの価値に気付いていなかったスポーツカードのコレクターたちにとって驚くべき新事実でした。以来、ビンテージ野球カードのコレクター達が彼のトロフィーカードを求めて問い合わせてくるようになりました。

またプラット氏の両親は、もともと彼が堅実な職業に就くことを願っていましたが、これらの5桁の売り上げを機に彼の職業に理解を示すようになったそうです。

しかし、これだけオークションで取引を成功させても、プラット氏は自身を第一にカードのコレクターであると考えています。そのため、同じカードを2枚以上持っていない限り手放すことは絶対にありません。

この29歳の野心家は、ミズーリ州セントルイス市郊外北部の町フローリサントで幼少期を過ごしました。当時、アメリカで多くの少年がそうであったように、彼にとっても最初のトレーディングカードの思い出と言えば野球カードです。

プラット氏は、「地元の警察の人達が、小さな箱に入った野球カード子供たちに配ったりしていました。おそらく私が7歳くらいの頃です」と、当時を振り返っています。

またプラット氏は子供の頃Topps社のホッケーカードも集めていました。彼は当時からそして現在も、地元ホッケーチームのセントルイス・ブルースの熱狂的なファンですが、1990年代後半、多くの子供たちがそうであったように、彼もポケモン流行の波に飲まれていきました。

Wizards of the Coast社が1999年にトレーディングカードを登場させるまでは、他の子同様ビデオゲームで遊んだり、テレビ番組を見たりする少年でした。今となっては、世界中で最も価値が高いとされるポケモンカードコレクションを所有する彼ですが、 初版 (ベースセット)が発売された当時、アメリカ中西部ではそれを入手することができず、誰でも買うことができるカードで我慢するしかなかったようです。しかし、その頃は友達と交換して楽しく遊んでいただけなので、彼はそれほど気にしていませんでした。

「1999年から2000年にかけてポケモンカードは大流行しました 。周りの子供たちは全員ポケモンカードを持っているような感覚で、持っていなかったら変わり者呼ばわりです」(プラット氏談)

高校時代、プラット氏はイリノイ州のエドワーズビルへ引っ越したことを機にポケモンカードの収集を止めてしまいましたが、その後、南イリノイ大学エドワーズビル校在学中に再び集め始めることになります。

プラット氏は、明確な将来のキャリア目標を持たずに大学生活を送っていたことが、結果として自分をポケモンカードの道に進ませたと思っています。「自分が将来どの方向に進んでいきたいのか全く分からず、そんな時、ポケモンカードを収集することで気持ちを安定させていたのだと思います。最初は興味本位で調べ始めたのが、いつの間にかのめり込んでいった感じです。将来の予想が全くできない状況の中、不安や喪失感を解消するためこのベンチャー企業を始めたのですが、今では全力で取り込むまでになっています。ですから、名実ともにポケモンカードコレクターになったのは、2007年頃だったと言えるでしょう。」(プラット氏談)

その当時、米国ではコレクターの大半がアメリカ版(英語版)のポケモンカードを収集していましたが、プラット氏は日本語版のプロモカードを探し求めるようになりました。またその頃、彼は大学の専攻を哲学に決め、将来妻となるエリザベスとの運命的な出会いが訪れています。いずれは哲学の修士号を取得し、教授職に就くのではないかと思っていたそうです(現在、彼の妻が教授であるように)。

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「妻と同じような職に就こうと考えていましたが、その思惑はポケモンによって見事に外されました」と、プラット氏。「ポケモンカードの売買に多くの時間を取られるようになり、いつの間にか全精力をポケモンカードに注ぐまでになりました。」

その一方で、プラット氏はポケモンカードの売買が誰からも認められる職業だとは完全に思えず、大学卒業後、短い間ですが一旦保険会社に就職しています。

クスクスと笑いながら、「あそこではたった3日半しか持ちませんでした」と、プラット氏。「あの頃は、もっとポケモンカードの売買に時間も労力もかけるか、それとも一般的なの仕事に就くか、その選択に悩んでいました。結局は就職の道を選び、医療保険の請求を処理する仕事に就きました。その保険会社は、主に社会保障やメディケア(公的医療保険)が必要な方達をお手伝いする営利法人でした。あれほど苦痛な環境は人生で初めてで、本当に憂鬱でした。今になって振り返ってみると、あの経験が逆の方向へと進むきっかけとなったので、今では良い経験をしたと思っています。」 (プラット氏談)

以来、プラット氏にとってポケモンカードの売買はフルタイムの仕事となり、今では世界一のポケモンレアカード とトロフィーカードのコレクションを築き上げるまでになりました。

当初は、未鑑定の状態でカードを大量収集していましたが、 2008年、友人からPSAというカード鑑定会社の存在と、カードのグレーディングという概念を初めて耳にすることになります。

「カードをバインダーに保管しておくのが好きだったので、最初はあまり乗り気ではありませんでした。しかし、トロフィーカードを集め始めてからは、高価なカードをどのように保存すれば良いか分からなかったのですが、バインダーよりも良い方法があるのではないかと思ったのです。」と、プラット氏。「一度ネジ式のカードホルダーにトロフィーカードを保管していたのですが、ホルダーから取り出した際にカード裏のインクが剥げ落ちたことがありました。あの瞬間は本当に悪夢を見ているようで、もっと良い保存方法が必要だと思っていた時にPSAに出会ったのです。それ以来、主にカードを保護する目的でPSAのサービスを利用するようになりました。カードを最良の状態で保護してくれるので、PSAのホルダーはとても気に入っています。高価なカードをバインダーで保管するのは不安ですから。」

このような経緯から、プラット氏はポケモンカードのグレーディングをPSAに大量発注する草分け的存在になったのです。

プラット氏は、「PSAは、カードの保護に最適なオプションだと思います。PSAの密閉特殊ホルダーは一番のお気に入りです。当初は、カードを保護する為にグレーディングを受けていましたが、同じ種類のカードが増えてきたので、PSAのグレードが付いたカードを売るようになりました。カード状態について購入者とやりとりするが手間が省けるので、 PSAのグレーディングはとても有難いです 」と、述べています。

何百という彼のポケモンカードコレクションの中でも、 PSA 9グレードの「1998 ピカチュウ・イラストレーターカード」が今でも彼の一番のお気に入りのようです。

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「私と言えばこのカードを連想する人が大勢いるのでは」と、プラット氏。「このカードが自分の代名詞となっているのは、世の中に出回っている全てのPSA 9のカードは私がグレーディングを依頼したからでしょう。それに、2011年に購入したカードは、唯一のPSA9付きカードとして長い間知られていましたから。最初に購入したカードは今でもまだ大切に持っていて、ビックリするような金額を提示されてもきっと売ることはないと思います。」

彼のポケモンカードコレクションの中には、1997年に入賞者にだけ贈られた史上初のピカチュウ・トロフィーカードも含まれています。プラット氏はそれを「間違いなく最も注目されているトロフィーカード」と評しています。過去には、PSAのグレードが付いた3枚のカード(PSA 9グレード2枚とPSA NM-MT 8グレード1枚)には6桁超えの提示もあったそうです。

「これらのカードは、日本で最初に開催されたポケモンの公式トーナメントで入賞者に贈られたもので、トーナメントの資料によると、優勝、準優勝、三位入賞者にそれぞれ贈られたトロフィーカードが4枚ずつ存在しています。私は最高グレードが付いた完全な1セットを持っています。そのセットのカードのスペアも2枚持っているので、つまり、私は当時配られた全カードの半分近くを持っていることになります。」(プラット氏談)

プラット氏にとって、1999 年に発行されたシークレット・スーパー・バトル(SSB)ミュウツーカードの3枚セットも彼のコレクションの中で特別な存在だそうです。これらのカードも同様に、日本で開催されたトーナメントで優勝、準優勝、三位入賞者にのみ贈られたカードです。プラット氏によると、これらのカードはわずか9枚から18枚しか制作されていません。彼が保有する3枚セットのうち、優勝と準優勝の2枚はPSA GEM-MT 10とグレードが付いており、三位入賞のカードにはPSA 8グレードが付いています。

「これまで、それぞれのカードに5桁の金額を提示されたことがありますが、今のところ売る予定は全くありません」と、プラット氏は述べています。

現在プラット氏が所有するコレクションの中には、その他の珍しいトロフィーカードや日本限定版のカード、さらにはウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が初期の頃に発行した人気のセットもいくつか含まれています。これらに加え、彼はPSA 10 グレードの1999年初版 (ベースセット)リザードン・カード(#4)も所有しており、このカードはポケモンカード界の「1993年 版SP デレク・ジーター」と称されています。

プラット氏は、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社製のカード、とりわけ初期の未開封ボックスやPSAのグレードが付いたカードの価格上昇に衝撃を受けたようです。

「本当に凄いことになってます。どれだけ価格が急上昇しているか説明するには、2009年のコレクター仲間とのやりとりに一番良く表されていると思います。私たちはオンライン・フォーラムでPSA 10 グレードが付いたリザードンが本当に700ドルもの価値があるか議論していました。私は当時その値段は高すぎると思ってたからです。しかし、eBayのオークション(2017年3月末に終了)で、同じ種類のカードが16,270ドルで落札されました。この価格上昇率から、同カードの人気の急上昇ぶりを察することができます。」(プラット氏談)

プラット氏によると、今でも5桁で落札されることはあるものの、トロフィーカードの価格上昇は緩やかで、その最たる理由として認知度の低さを挙げています。

「数年前と現在のトロフィーカードの価格を比較すると、その上昇率がリザードン(1999年初版ベースセット)に 匹敵するほどではないのは、間違いなくこのカードのことを知らない人が大勢だからです。これらのカードの認知度が上がれば、 世間の関心度も高まってくるはずです。」(プラット氏談)

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現在、高いグレードが付いた 初期のカードやレアカード市場が活況を呈していますが、一体その理由は何故でしょう?プラット氏はその一因として、スポーツカードとは異なり、今でも子供たちの間でポケモンカードが人気だからであると推測しています。

「ポケモン市場を支えているのは、途切れることのない大きな需要にある」と、プラット氏は述べています。さらに、「今でも子供から大人までの幅広い世代がポケモンカードに夢中で、人気が絶えることもなく、市場は一定の規模を維持し続けることができている」との見解も示しています。

プラット氏は、ポケモンカードが5桁で売れて良かったと思うことのひとつは、依然としてその業務内容は詳しく理解できていないものの、彼の両親がこの仕事に理解を示してくれたことだと述べています。

「私がこの仕事でようやく生計を立てられるようになったので、両親はやっと安心してくれたと思います」(プラット氏談)

今では、彼らの息子はポケモンのエキスパートとして世に知られるようになり、その活躍ぶりをYouTube で見ることができます (smpratte)。 2016年8月に動画配信が始まり、現在約2千人がチャンネル登録済みです。動画の中では、レアカードの解説や主要セットの分類、そしてコレクターからの質問に答えたりしています。

彼は、YouTubeの使い途についてはまだ模索中とのことで、「今はまだ自分が話すのをただ録画して、編集は一切していません。動画は主に自分で始めたオンライン・フォーラム (Elite Forum)に載せています。フォーラムに掲載することが、YouTubeを始めた一番の理由です。今のところ動画の出来にはある程度満足していて、視聴者にも好評です。エキスパートとしてアドバイスを求められていると思うので、まだ始まったばかりですがその期待に応えたいです」と述べています。

プラット氏は、ポケモンのレアカードや初期カードの市場規模は依然として小さく、今後確実に拡大していくと確信しています。

「ポケモンカード市場は未だに初期段階です」と、プラット氏。「マジック:ザ・ギャザリングを例にみると、マジックの愛好家たちは彼らのカードの市場価格に詳しいですが、ポケモンの場合はそうではありません。マジックの世界では、誰もが市場の あらゆる動向について詳しい気がします。それはまるで株式市場のようです。全てのセットのあらゆるカードのトレンドデータを公開しているウェブサイトもいくつかあります。ポケモンは、残念ながらまだそこのレベルまで達していません。」

注意:本記事で引用されている鑑定分布データ及び価格は2017年5月現在のものです。

英語の記事は添付をご参照ください。